2013年10月14日

故郷に帰りたい

ハイサイ。フライトドクター ヨシバードです。3連休はいかがお過ごしですか?僕は2日の連休を頂いてエネジーチャージしてきました。今日はヘリ当番ですが、平和な時間が流れています。

さて、先日、離島へ戻る患者さんの付き添い搬送を行ってきました。公的ヘリであるドクターヘリや、自衛隊が行うヘリ添は基本的に上り搬送(いわゆるより高度な医療機関への搬送)しか認められておりません。状態の悪い方を早く高次施設に搬送し治療を開始するということは理解できることですが、離島を多くかかえる地域では、治療が終わったあとに離島に戻ることも患者さんにとっては苦労の多いことです。後遺症が残り器械や酸素が常時必要な状態、常時介護が必要な状態...は特に困難を極めます。

でも、みんなは「いつかは慣れ親しんだ故郷に戻りたい」と思うものです。

これまで何度か民間保険会社のサービスを使って、日本-海外間のrepatriation service(本国送還業務)に携わったことがありますが、沖縄ではこういったサービスはみたことがありません。

今回のケースは外傷のため全面的な医療介入が必要な方でした。受け持った時点で家族に伺ったプランとしては、十数時間かけて船で戻るとのこと。しかも到着が深夜になるとのこと。そうでなければ、搬送スペースの関係から大きい飛行機が就航す大都市空港まで一旦戻ってからトランジットを行うとのことでした。いずれの方法にせよ、酸素や吸引の問題、長時間の搬送で褥瘡が悪化してしまう恐れがあり、疲労の蓄積からバイタルが不安定になることも心配でした。

故郷に帰りたい

那覇と離島を結ぶ航空便だと搬送は一時間のみ。ただ、小さい飛行機のためリクライニングができず座位での搬送に限られます。看護師、理学療法士から状況を聞き取りしながら、同時に地域連携室を通して搬送にかかわるプラン・準備を行いました。体位、吸引、血圧の管理など予想される病態の変化をリストアップし対策の練りました。その上でエアラインの担当者とも何度か交渉し、なるべくギリギリまではストレッチャーで待機し、座位時間を極力短縮するように便宜をはかってもらいました。

大型機に載せるためのリフト車
故郷に帰りたい

当日はタラップ直近まで病院救急車で乗りつけ出発間際で車いすに載せ替えから人力で持ち上げました。前後座席もエアラインの好意でブロックして頂いたり、医療器材の使用についても融通を利かしていただきました。ありがとうございます。

故郷に帰りたい

故郷に帰りたい

血圧は予想通り座位で低下しましたが、弾性ストッキング効果もあり症状が悪化せず昇圧薬なしで乗り切ることができました。

故郷に帰りたい

離島では、救急車がタラップまでお迎えにきてくれました。

故郷に帰りたい

たった一時間、されど一時間。一年ぶりの離島の景色を窓からみた時の患者さんとご家族の安堵した表情がとても印象的でした。

故郷に帰りたい

島での滞在時間はわずか30分弱でしたが思い出に残る搬送となりました。

船でしかアクセスのできない離島、飛行機でも搭乗制限がかかる時はもっとスムーズに下り搬送ができるシステムが今後構築されることを願っています。



Posted by ドクターヘリオキナワ1 at 13:29│Comments(0)
 
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