2012年01月30日
睦月も残すところあと1日
はいさい。フライトドクター ヨシバードです。
2012年正月を迎えたのもつかの間、もう明日で1月が終わろうとしています。沖縄は1~2月が一年で一番寒い時期ですが、先週末は20℃前後のいい天気に恵まれました。(沖縄の桜は今月末が見ごろです)日没時刻も少しずつ伸びてきていて、今日は18:20となっています。今後は、遅い時間の近隣離島からの要請にも少しずつ対応が可能になってくると思います。

今日は今月最後のヘリ当番です。午前中遅くから読谷ヘリ基地でも大粒の雨が降り出しました。今月の総要請件数は月平均に比べて少なめではありますが、個人的にはチャレンジングな要請がありました。
まずは、新生児の搬送。通常、新生児は分娩後に具合が悪い場合は直接新生児科のドクターの手に渡り管理をされますが、今回は産院から小児病院への転院搬送でした。生後数時間のベビーの「呼吸不全」というキーワードで消防司令より要請が入りました。ヘリの搬送対象に年齢の除外項目はありません。救急医≠小児科医ですが、少ない情報のなかで搬送中のトラブルに備えて準備をしました。接触時、ベビーの状態は低酸素ながらも酸素投与に反応し末梢チアノーゼは認められませんでした。循環は五感で確認しさほど悪くない印象であったため、低体温に陥ってしまうのを危惧し外での処置はほとんどせずに機内へと搬入し離陸しました。搬送先までの病院までは、陸路だと高速道路を使っても30~40分程度かかりますが、ドクターヘリはほんの7分(現場からの引継を入れても17分)で目的地に着陸しました。結果的にはオーバートリアージであったという批判はあるかもしれませんが、救急車に産院からの医師同乗ができない状態での陸路搬送よりは、必要時には追加で医療介入ができる空路搬送という意味では、ヘリの活用は妥当だったのではと考えています。

次症例は、離島からの重症心筋梗塞の転院搬送。前日の夜に失神で入院した患者が朝方にショックに陥ったとのことで、朝の定期点検中に要請がありました。昇圧薬を使用しても血圧は60台で意識レベルも低下してきているため一刻の猶予もないと判断し、要請元に気道管理を、同時に基地病院の救急リーダーに緊急カテと体外補助循環のスタンバイをお願いしました。接触時、心電図では心筋に広範囲の虚血性変化が表れており、大腿動脈が微弱にしか触知できないことからもこの推測が裏付けらました。簡単な診察と同時に、すでに往路で準備済の昇圧薬ポンプに切り替え、致死性不整脈に備えパドルパッドを貼り機内で搬入しました。
写真は本搬送に必要な物品をストレッチャーに準備した写真です。(携帯酸素、バッグバルブマスク、モニター、パドルパッド、昇圧薬、薬剤など)

30分の搬送時間がとても長く感じました。徐々に大腿動脈での触知が微弱になってきたからです。昇圧薬の増量で対応しましたが、その作用で頻脈もひどくなります。心電図は時々心室細動を疑わすような波形を呈しており、いつ心停止してもおかしくない状況でした。抗不整脈薬を追加投与し、ぎりぎりのタイミングで心停止を回避しカテ室に滑りこみました。
今月は、フライトナースとフライトドクターの候補者が数人OJTに入りました。比較的軽傷から重症の転院搬送、重症多発外傷の現場要請など学ぶべき症例が多かったように感じました。また、内地からは医学部4年生の学生さんも、救急医療と離島医療を肌で感じるために見学にこられました。


来月も引き続きよろしくお願いします。
2012年正月を迎えたのもつかの間、もう明日で1月が終わろうとしています。沖縄は1~2月が一年で一番寒い時期ですが、先週末は20℃前後のいい天気に恵まれました。(沖縄の桜は今月末が見ごろです)日没時刻も少しずつ伸びてきていて、今日は18:20となっています。今後は、遅い時間の近隣離島からの要請にも少しずつ対応が可能になってくると思います。

今日は今月最後のヘリ当番です。午前中遅くから読谷ヘリ基地でも大粒の雨が降り出しました。今月の総要請件数は月平均に比べて少なめではありますが、個人的にはチャレンジングな要請がありました。
まずは、新生児の搬送。通常、新生児は分娩後に具合が悪い場合は直接新生児科のドクターの手に渡り管理をされますが、今回は産院から小児病院への転院搬送でした。生後数時間のベビーの「呼吸不全」というキーワードで消防司令より要請が入りました。ヘリの搬送対象に年齢の除外項目はありません。救急医≠小児科医ですが、少ない情報のなかで搬送中のトラブルに備えて準備をしました。接触時、ベビーの状態は低酸素ながらも酸素投与に反応し末梢チアノーゼは認められませんでした。循環は五感で確認しさほど悪くない印象であったため、低体温に陥ってしまうのを危惧し外での処置はほとんどせずに機内へと搬入し離陸しました。搬送先までの病院までは、陸路だと高速道路を使っても30~40分程度かかりますが、ドクターヘリはほんの7分(現場からの引継を入れても17分)で目的地に着陸しました。結果的にはオーバートリアージであったという批判はあるかもしれませんが、救急車に産院からの医師同乗ができない状態での陸路搬送よりは、必要時には追加で医療介入ができる空路搬送という意味では、ヘリの活用は妥当だったのではと考えています。

次症例は、離島からの重症心筋梗塞の転院搬送。前日の夜に失神で入院した患者が朝方にショックに陥ったとのことで、朝の定期点検中に要請がありました。昇圧薬を使用しても血圧は60台で意識レベルも低下してきているため一刻の猶予もないと判断し、要請元に気道管理を、同時に基地病院の救急リーダーに緊急カテと体外補助循環のスタンバイをお願いしました。接触時、心電図では心筋に広範囲の虚血性変化が表れており、大腿動脈が微弱にしか触知できないことからもこの推測が裏付けらました。簡単な診察と同時に、すでに往路で準備済の昇圧薬ポンプに切り替え、致死性不整脈に備えパドルパッドを貼り機内で搬入しました。
写真は本搬送に必要な物品をストレッチャーに準備した写真です。(携帯酸素、バッグバルブマスク、モニター、パドルパッド、昇圧薬、薬剤など)

30分の搬送時間がとても長く感じました。徐々に大腿動脈での触知が微弱になってきたからです。昇圧薬の増量で対応しましたが、その作用で頻脈もひどくなります。心電図は時々心室細動を疑わすような波形を呈しており、いつ心停止してもおかしくない状況でした。抗不整脈薬を追加投与し、ぎりぎりのタイミングで心停止を回避しカテ室に滑りこみました。
今月は、フライトナースとフライトドクターの候補者が数人OJTに入りました。比較的軽傷から重症の転院搬送、重症多発外傷の現場要請など学ぶべき症例が多かったように感じました。また、内地からは医学部4年生の学生さんも、救急医療と離島医療を肌で感じるために見学にこられました。


来月も引き続きよろしくお願いします。
Posted by ドクターヘリオキナワ1 at 14:34│Comments(0)
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