2011年02月12日

山陰に差しこむ救命の光

フライトドクター亀です。沖縄県ドクターヘリブログとリンクしていただいている公立豊岡病院但馬救命救急センターに研修に行かせていただきました。公立豊岡病院は兵庫県の日本海側に所在し、2010年4月に3次救命救急センター開設と同時にドクターヘリを運航開始しました。周辺人口19万人、ドクターヘリでの対象地域では70万人の人口を抱え、周辺50km以内に他の救命センターはひとつもありません。
山陰に差しこむ救命の光
センター長の小林医師以下9名の若い救急医がやってきて、兵庫県北になかった新たな救急医療への挑戦を始めています。以前から30分以上かかる救急搬送が年間1000件を超えていた医療過疎のこの地域では、ドクターナースが現場へ出て行って少しでも早く治療を開始するドクターヘリはすぐに受け入れられ開始から10ヶ月での出動が800件目前です。
冬は霧や豪雪で出られない日が多くこの日も窓の外は真っ白でした。
山陰に差しこむ救命の光
昼過ぎから運航開始、するとすぐに要請が。スキー場での転倒。
50kmの距離を15分で到着し、初期診療を終えて帰ってくるまで40分。
ERでは救急医とナースが待ち構えすぐにCT検査へ、現場にドクターナースが行って治療開始しているが故になせる技、患者さんの肉体的な負担も最小限で済みます。
山陰に差しこむ救命の光
ろっ骨骨折と気胸のあった患者さん、バイタル安定だったので現場では処置されませんでしたがERでの検査は最短で終え、ErDrはすぐに胸腔ドレナージチューブを挿入しました。空気漏れでしぼんだ肺を膨らませ呼吸を安定させます。しかしこの日はあいにくの満床で入院ができません。ならばヘリ併設の強み、そのまま患者さんの地元病院への転院搬送です。但馬救命での滞在時間は1時間程度でした。沖縄県ドクターヘリは病院とヘリ基地が離れており、また安定した患者さんの受け入れ先となる2次救急の病院が常に満床でこうはいきません。今後の課題です。
山陰に差しこむ救命の光
何しろ他に3次施設がありませんのでまずはこの救命に患者さんを搬送し、必要な処置をしたのちに後方の病院に入院加療をお願いするのが患者さんにとっても病院側にとっても良い医療を提供するには一番効率が良いのです。この日は3件要請に1件の転院搬送と但馬地域においてヘリによる救命システムは必要不可欠、かつ日常のものとして浸透していました。救急医療には熱意ある救急医療従事者の存在はもちろんですが行政・消防がそしてなによりもなによりも地域に住んでいるみなさんが救急医療を必要として応援してくれることが不可欠です。但馬救命センターは奇跡的にそれが揃い医療過疎だった地域に安心と希望の光を差し込み始めています。
山陰に差しこむ救命の光
沖縄県ドクターヘリをもっと活用していくための改善策の一つとして消防からの要請基準をキーワード方式に変えるように準備中ですがこれも但馬から取り入れさせてもらった手法です。小林誠人センター長や救急医のみなさん、救急ナースのみなさんには大変お世話になりました。浦添総合病院も但馬救命センターと同じように地域の救急医療を支えようとするスタッフの情熱では負けません。これからも切磋琢磨してまいりたいと存じます。


タグ :但馬豊岡


Posted by ドクターヘリオキナワ1 at 01:08│Comments(2)
この記事へのコメント
こんばんは。
豊岡に来たんですか!?
寒かったですか?
12日って・・・結構天気悪かったですよね。

夏また来て下さい★
Posted by Kazu at 2011年02月14日 20:01
kazu様、コメントありがとうございます。豊岡病院但馬救命救急センターの体制はとても柔軟かつ他の部署との連携がとれており浦添総合病院も見習うところが多かったです。今回は1日だけの研修でしたが次回は城崎温泉や天橋立などにも足を伸ばしてみたいです。
Posted by ドクターヘリオキナワ1ドクターヘリオキナワ1 at 2011年02月15日 10:11
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